【#05】Making of Shoes - Leathers

Sellenatelaの靴には、生地や雑材を除いてほとんどの場合、本革が使われています。本革には、フェイクレザーにはない個性と味があり、デザイナー榎本がその奥深さと面白さに魅了され、好んで本革を使用しています。

今回訪ねたのはSellenatelaの靴作りには欠かせない皮革の企画問屋、株式会社丸喜さん。

前回までのSTORIESでもお話ししてきたように、分業化が徹底している靴業界では、皮革を扱う資材屋も分野毎に細分化されていて、丸喜さんは主に婦人靴のアッパー向けの加工革を扱っています。

国内生産の革と海外からの輸入品、その両方を取り扱っている丸喜さん。ショールームの輸入品のゾーンには、イタリアやインド、エチオピアなど世界十数カ国からやってきた高品質レザーがずらり。

1枚の革から、わずか2足の靴しか作れない

デザイナーの榎本が手にしているのは、17AW COLLECTION の HELENA【REDDISH BROWN】で実際に使用したイタリア製のレザーで、カーフレザー(牛革)の中でも最高級と言われるベビーカーフ。とても滑らかで柔らかく、きめの細かい質感が魅力です。さて、この1枚の革から、何足の靴が作れるのでしょうか?

―― 答えはわずか2足。ベビーカーフは生後3ヶ月までの仔牛の革を使っているため、1頭から取れる革がとても小さいのです。

下写真中心にあるパンプス、HELENA【REDDISH BROWN】は上写真のレザーを使って作られたもの。

イタリア製のレザーは日本製のレザーには無い、絶妙な色出しやセンスを感じさせる加工が魅力。

Sellenatelaでも人気の定番ブーツNOAやGINAのレインシリーズに使われている撥水加工レザーを発見。バリエーションもたくさん。

丸喜さんでしか手に入らない自社企画のレザーには、デニム風の加工を施したものなど、他では見かけないようなユニークなレザーがずらり。

色もとてもカラフルで、見ているだけでも、楽しい!もちろんイタリア製レザーも魅力的ですが、日本人にしか作れないレザーもあるはず。最近では逆に海外の取引先から”日本らしい色出しをしてほしい”という依頼を貰うこともあるんだとか。 

たくさんのレザーが整然と並ぶストックルーム。製造元のタンナーごとに色分けされています。

面白さを追求し、新たな価値をつくる

皮革問屋も近年多くの企業が暖簾を下ろしていく中で、新しい挑戦者が出てこない今だからこそ、自分たちに出来る何か新しくて面白いことを常に探している、という社長の北澤さん。元々ファッションが好きで、年に2回はイタリアに足を運び、最新の海外のトレンドを常に見つめながら、47年間この会社を続けられています。

「ファッションを仕事に出来て、それがビジネスになる、しかもイタリアに行けるなんて、最高の仕事だよ。」と笑顔で語る、ポジティブな姿勢が印象的。

STORIES #02#03でご紹介した靴メーカーのアポロさんと同様に、丸喜さんでも若手スタッフが活躍されています。新たな面白い革をつくるために、革の企画は社長と若手スタッフで担っているそうです。

アポロの社長さんから、ショールームリニューアルの記念に頂いたという、スペシャルな一足を発見。

シリーズ「Making of Shoes」としてこれまで、

と4回に渡って、Sellenatelaの靴作りについてお届けしてきました。

近年たくさんのメーカーや資材屋が廃業していく中で、未来に繋がる若い人材が活躍する場をつくり、面白さや新しさ、オリジナリティを追求している方々がいる。そういったメーカーや資材屋と取り組むことで、Sellenatelaも挑戦をし続けられるのです。

 

 

Ikue Enomoto

Sellenatela デザイナー 榎本

「なんで日本製にこだわるの?」とよく聞かれます。日本製の面白さは、大量生産のライン化された生産背景では感じづらい人との繋がりや、分業化されているからこその専門性なのではないかと思っています。閉鎖的な靴業界ですが、飛び込んでみると、受け入れてくれて一緒に挑戦をしてくださるメーカーさんや資材屋さんがいる。こういう前向きな方々と取り組んで、5年後、10年後の靴業界が明るくなるようにしていきたい、という思いがあります。

デザイナーは夢を与える仕事、とよく言われるけれど、私もシューズデザイナーとして、靴に関わりたいと思う若い人たちに少しでも靴業界の魅力や、靴作りの面白さを伝えていけたらと思っています。

 

人や技術、靴作りのイメージソースとなるインスピレーション源など、Sellenatela にまつわるさまざまなストーリーをお伝えしていく「STORIES」。今後もあなたのそばのSellenatelaの靴がもっと輝いてみえるようなお話をお届けしてまいります。お楽しみに。

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