【#13】DESIGNER’S BACKGROUND

Finding inspiration and making ideas come true.

Instagramより

#SellenatelaFindsInspirationIn

SellenatelaのInstagramを見たことのある方は、インスピレーション源を纏めた上記のハッシュダグがあることをご存知でしょうか?

ウェブコンテンツ「STORIES」でも何度か触れているように、Sellenatelaではデザイナーの榎本がアートやデザイン、建築、自然が織りなす造形物などから着想を得てシューズづくりをしています。日々の生活のなかで榎本の心にとまった作品等をInstagramを通して皆さまと共有したいという思いから #SellenatelaFindsInspirationInというハッシュタグをつくりました。

Sellenatelaでデザイナーとして活動をする前からアートやデザインを身近に感じていた榎本。今回のSTORIESは彼女が筆をとり、自身のバックグラウンドに触れながらそのルーツを辿っていきます。

 


 

「グラフィカル」「構築的」、私がデザインする靴を表すのによく使われる言葉です。現在はシューズデザイナーとして活動していますが、学生時代はグラフィックデザイナーを目指していました。幼い頃から「表現する」ということに興味があり、将来は感性を使った仕事がしたいと考えていました。

私の原体験は、高校3年生の文化祭で服飾デザイナーを目指していた友人とファッションショーを開催したことです。ショー全体のテーマを決めることから始まり、メインヴィジュアルやポスター、スタッフTシャツ制作、オープニングアクトのコレオグラフィーやBGMづくり、会場の装飾… テーマやコンセプトを決めるところから企画を実現するまでのすべてを自分たちで行ったことが大きな経験となりました。

将来はグラフィックデザイナーになろう!表現のなかでも特にメインヴィジュアルやポスターづくりなど、視覚に訴えるものをつくる楽しさに惹かれ、高校卒業後は東京工芸大学へ進み芸術学部でヴィジュアルコミュニケーションを専攻しました。3,4 年生の頃はグラフィックデザイン研究室に属し、ポスターやCDジャケットなど主に紙媒体のデザインを学びました。私たちの研究室では自分で描いた絵を使ってデザインをすることが多く、私は絵描きとしての才能の無さに思い悩む日々を過ごします。アートとデザインの境界線がわからず、自己表現を追い求めるがゆえの苦悩でした。

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 ポートフォリオ・大学3年生の頃の作品
左:環境問題ポスター 右:写真家 椎名誠ポスター

このまま社会に出て良いのかな… もっと広い世界を見てみたい… 悶々とした気持ちを抱えた私は、大学の春休みを利用してサンフランシスコにホームステイをしに行きました。今ではTwitterやUberなどが本社を置くテクノロジーで有名な街ですが、17年前はビートニクやヒッピー、LGBTなど文化的に多様な街として知られていて、日本のように型にはまった人が少なく個性的な人の多いことに衝撃を受けたのを鮮明に覚えています。そんな環境に自分を置いてみたく思い、卒業後は本格的にサンフランシスコへ留学することに決めました。

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 Alamo Square & Painted Ladies
榎本が住んでいたアパートの裏にある公園「アラモスクエア」とヴィクトリアンハウスの住宅「ペインテッドレディース」

留学中はサンフランシスコ州立大学デザイン学科の大学院に在籍し、ヴィジュアルコミュニケーションをメインに学びました。アメリカの大学はとにかく課題やプレゼンテーション、グループワークが多く、留学生にも容赦のない環境で精神的に鍛えられる日々でした。そして、作家としての自己表現ではなく、デザインの先にはユーザーやオーディエンスがいるのだということを教え込まれました。制約があるなかで、誰に何を届けるためにどう表現するのか、そんな観点を身につけることが出来ました。

大学院の卒業論文/制作では「ヴィジュアルコミュニケーションと幸福感について」を題材とし、視覚伝達で些細な幸せを与えることが出来るのかということを研究しました。壮大なテーマを選んだことで苦悩の連続でしたが、最後まで諦めずに形にしたことが自信へと繋がり、今の私を支えています。

ポートフォリオ2

留学経験を通して、私は「感性を使った仕事」ではなく「アイデアを形にする仕事」がしたいのだということに気がつきました。

私が渡米をした1年後に、日本に住む姉がシューズブランドを立ち上げ、その手伝いを始めたのがきっかけで靴の世界に入りましたが、私のなかではグラフィックデザインもシューズデザインも変わらず「アイデアを形にする仕事」で、デザインをするものの先には常に「人」がいます。その人々に、大量生産ではなく、小さなブランドから生まれるストーリーのある商品を届けたいという思いでシューズづくりをしています。

多様性を大切にしたサンフランシスコという街から学ぶこともとても多くありました。違うものを排除せず、共存すること。人種や国籍、性別や趣味・嗜好、違うものに捉われることなく「自分」を大切にし「自分以外」も受け入れること。アートやデザイン、建築やファッション、カルチャー、私のインスピレーション源が多岐に渡るのは、ジャンルにとらわれることなく物を見ることの大切さをサンフランシスコという街から学んだからです。留学時代に培った感覚が、現在自分でブランドを運営する礎になっています。

凛とした美しいもの、驚きや新鮮さを感じさせてくれるもの、唯一無二だと感じるもの。日々のなかで琴線に触れ、インスピレーションをくれる様々な存在が、私のなかで新しいアイデアへと変わります。

これからもインスピレーションを大切に、浮かんだアイデアを形にし、皆さまと共有することが出来ればと思います。また、それが誰かのインスピレーションとなって、アイデアやエネルギーの循環が生まれるきっかけとなれば幸いです。

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