【#12】19AW COLLECTION SOURCE OF INSPIRATION
現在各店舗やオンラインショップで展開中の19AWコレクション。
「REVOLUTION」をシーズンテーマとした今期は、デザイナーの榎本がとある展覧会で出会った、アール・デコ時代の家具デザインや本の装丁デザインからインスピレーションを受けて制作しました。
今回のSTORIESでは、19AWコレクションのインスピレーション源となった作品を、新作シューズと共にご紹介します。
19AWコレクションの着想源
今回のコレクションの制作は昨年10月に榎本が訪れた、東京都庭園美術館で開催されていた展示「エキゾティック×モダン アール・デコと異境への眼差し」から始まりました。
この展示は、非・ヨーロッパ圏の文化や美術がどうアール・デコに影響を与えたかに着目し、特にアフリカやアジアからの影響を作品とともに紹介するものでした。
榎本がこれまで描いていたアール・デコのイメージとはまた違う視点を投じたこの展覧会。なかでも興味を惹かれたのは、フランス人デザイナーのPierre-Emile Legrain(ピエール=エミール・ルグラン)でした。
ルグランは、1920年代初頭のアール・デコを代表する家具・製本デザイナーです。職人として、またデザイナーとして、希少で新しい素材やそれらの組み合わせを追求し、家具デザインでは木材に加え、革や象牙、金箔、銀メッキガラスなど、製本では革を全面に使用した幾何学的なデザインを多く発表しました。
彼の作品は特に、当時フランスの植民地であった北アフリカや西アフリカからの影響が強く、アフリカ文化とフランス文化を融合させたエキゾチックでモダンなものでした。
ルグランの革新的なデザインは人々を魅了し、特にファッション業界に多くの顧客がいたと言われています。
19AWコレクションを代表するシューズ
CHARLIE(シャーリー)
アール・デコの特徴である直線的な装飾美をデザインに取り入れたミュールCHARLIE。
アッパー部分は、一本の縦軸となる革紐に横軸となる革紐をひとつひとつ結びつけて制作しています。作業はすべて職人が手で行っており、通常つま先を成型するために入れる芯材を使用していないため柔らかな履き心地が特徴です。
着用した際に革紐が抜けることが無いよう、中底の下に吊り込む革紐の端部分はテープでトリミングし補強。職人の技術とノウハウによって実現した、デザイナー榎本一押しのアイテムです。
MATILDA(マチルダ)
アフリカ文化から影響を受けていたピエール=エミール・ルグラン。19AWコレクションの制作をするなかで出会ったマルチカラーのフェイクファーが、榎本にとって「アフリカ」のイメージと重なり、MATILDAのデザインに取り入れました。
オレンジ、グリーン、ブラウン、イエロー、ホワイト、鮮やかで生命力を感じるカラーコンビネーション。個性的なマルチカラーのファーを主役とした、動物のような愛らしさを持ったアイコニックな一足です。
ELLY(エリー)
直線と幾何学。アール・デコの特徴を感じさせる生地との出会いがきっかけで生まれたELLY。この生地は、榎本がコレクション制作中に描いていたクラシックモダンなヒールローファーのイメージにピッタリと合う素材でした。ユニークな表情に仕上げるために生地だけで全体をつくるのではなく、同色のカーフスキンを組み合わせています。
切り替えられた踵部分にはクッションを入れ立体感を持たせ、より構築的なデザインにしました。また、クッションを入れることによって足当たりが良くなるという利点も。
オリジナルメタルパーツ
19AWコレクションを製作していくなかで、ルグランのようなモダンな家具を生み出したデザイナーたちからインスピレーションを受けて、Sellenatelaのアイテムに装飾として加えるためのオリジナルパーツを製作したいと考えました。
新作のローファーKYLEやELLYに取り付けたメタルパーツは、1950年代に彫刻家及び家具デザイナーとして活躍したハリー・ベルトイアの、ワイヤーチェアやスラットベンチといった構築的なデザインに着想を得て製作したもの。
スラットベンチは、HALL by Sellenatelaでもご試着のためのベンチとして活用しており、シンプルながら強い存在感を放つ榎本お気に入りの家具です。
シンプルで削ぎ落としたデザイン。何年経っても変わらない存在感。
そんなイメージを形にしたSellenatelaオリジナルのメタルパーツです。
最後に…
Sellenatelaデザイナー榎本の靴作りは、毎回インスピレーションを得た作品やものごとを掘り下げていくことから始まります。その過程をストーリーとして発信することによって、それに触れた方々のインスピレーションとなったり、会話のきっかけとなったり、ファッションアイテムの一つとしてだけでなく楽しんでいただければ幸いです。
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