【#11】19SS COLLECTION SOURCE OF INSPIRATION Vol.2

【#11】19SS COLLECTION SOURCE OF INSPIRATION Vol.2

19SSコレクション ジョージア・オキーフと新作シューズの関連性を紐解く

stories11

Sellenatelaでは、半年ごとにデザイナー榎本が選んだインスピレーション源をもとにシーズンコレクションを制作しています。先月公開したSTORIES #09 では「19SS COLLECTION SOURCE OF INSPIRATION Vol.1」として、19SS コレクションのインスピレーション源、アメリカ人女性画家ジョージア・オキーフと彼女の終の棲家となったニューメキシコ州にあるふたつの家についての話をしました。

Vol.2 となる今回は、デザイナー榎本の心に響き、今シーズンのコレクション制作に深く影響を与えたオキーフの作品や彼女の家の写真とともに、19SSコレクションを代表するシューズの制作ストーリーをご紹介いたします。


RAE(レイ)

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ニューメキシコ州に居場所を見つけたジョージア・オキーフが、家の周りの荒れ果てた土地に散歩に出かけた際に収集していたのが、石や動物の骨でした。オキーフはそれらを家へと持ち帰ると、部屋や玄関先に飾ったり、作品のモチーフとして描いたりしていました。

特に描くことが多かったのが、砂漠で果てて骨となった馬や牛、子羊などの頭骨で、それらを描いた作品はオキーフの代表作の一つです。Sellenatelaデザイナー榎本は、大自然や生や死といった人間が抗うことができないものへの賛歌のような、不思議な美しさを感じさせるその作品たちに惹かれていました。

georgiaokeeffe

Summer Days, 1936
https://www.georgiaokeeffe.net/summer-days.jsp
 

そして、コレクション制作を進めていくなかでヒールを扱う資材屋に訪れた際に出会ったのが、新作ミュール「RAE」に使用した有機的なフォルムをしたヒールです。

heels

 

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榎本の頭のなかで、このヒールの形状がオキーフが描く動物の頭骨のフォルムと重なり、ヒールを主役としたデザイン「RAE」を考案しました。また、着想源の骨を連想させ、オキーフが生きた時代を感じさせるようなヴィンテージライクな乳白色でヒールを塗装することによって、更に有機的な雰囲気になるよう制作しています。

アイコニックなヒールを際立たせるために、アッパーのデザインはシンプルに。中心で素材やカラーを切り替えて、コントラストをきかせています。また、バックストラップをアッパーの内側に取り付けることによって、バランスが新鮮に見えるようデザイン。内側に取り付けられたバックストラップは、足の動きにあわせてストラップが動き、歩きやすくなるという利点も。

rae


DANA(デイナ)

dana

榎本が今回のインスピレーション源である書籍『ジョージア・オキーフとふたつの家』に出会う前から好きだったオキーフの作品の一つが、四角を描いたシリーズ。これはオキーフが晩年を過ごした二つの家のうちの一つ、アビキューの家の扉を描いたもので、オキーフはこの扉に惹かれてこの家を購入したと言われています。

オキーフ作品

https://www.cntraveler.com/stories/2014-11-23/annie-leibovitz-s-pilgrimage-a-revealing-exhibition-of-the-photographer-s-personal-work 

四角を描いたシリーズの中でも特に 『Black Door with Red』 と名付けられた作品は、四角を組み合わせた幾何学的モチーフと色彩だけで扉の愛らしさが表現されており、榎本はこの作品に着想を得て、サンダル「DANA」をデザインしました。

オキーフ作品

Black Door with Red, 1954
https:// curiator.com/art/georgia-okeeffe/black-door-with-red

たかが四角、されど四角。シンプルなモチーフだからこそ特徴的に扱うことの難しさを感じ、試行錯誤ののち考えついたのが「玉だし」と呼ばれる手法で四角を縁取ることでした。「玉だし」は、膨らみを持たせたパイピングのことを言い、間延びしがちなデザインに立体感を加えてくれます。

dana

また、四角い部分をエラスティックゴムにすることで、素材感の違いが表情の豊かさを生みだしています。ソールはコルクを巻いたフラットフォームにし、カジュアルな要素をプラス。気取らない雰囲気と遊び心を大切にしたサンダルです。

dana


SOPHIE (ソフィ)

sophie

アビキューの家にある「屋根のない部屋」。オキーフはこの「屋根のない部屋」を愛し、朝食や昼食をとったり、収集した石や骨、流木などを飾って楽しんだりしていました。

o'keeffe photo

Georgia O'Keeffe Sitting With Her Rock Collection, 1966
Photography: John Leongard
http://www.artnet.com/artists/john-loengard/georgia-okeeffe-sitting-with-her-rock-collection-a-EFD0B_kaLnLXSR9nPvYcyA2

屋根の代わりとして太い梁に細い横木を交差させ、スクリーンを張ったアトリウム的な空間に降り注ぐ光と影の移ろいを収めた1枚の写真。

 オキーフの家

Georgia O'Keeffe's house in Abiquiú, New Mexico. Photograph by Herb Lotz, 2007
https://www.knoll.com/knollnewsdetail/georgia-okeeffe-abiquiu-new-mexico

この「屋根のない部屋」の写真に心惹かれた榎本は、光と影の移ろいをインスピレーション源に、サンダル「SOPHIE」の編み地をデザインしました。最初は、斜めに降り注ぐ光と影をイメージし、編み地自体を斜めに複雑に絡むようデザインをしていましたが、テクニカルな理由からデザインの変更を余儀なくされました。そこで、考案したのが縦軸と横軸で編んだ革紐を斜めに使用することでイメージを保つ方法です。

デザイン画

斜めに使用した編み地をいかすために甲を覆うラインも斜めにし、アシンメトリーなデザインに仕上げました。つま先の形は角張ったスクエアトゥ、そして、ヒールは丸い円柱型のヒール。建築物から着想を得たデザインだからこそ、編み地だけでなく、全体的に構築的なイメージになるよう制作しています。

sophie

コレクションのインスピレーション源に触れて

19SSコレクションを代表するデザインの制作過程について触れた今回のSTORIES

Sellenatelaデザイナー榎本の靴づくりは、漠然としたイメージを、インスピレーション源をもとに具象化することから始まります。学生時代にグラフィックデザインやインダストリアルデザインを学んでいたことにも起因し、心惹かれるのはいつも、デザインやアート、建築といった分野の作品や、それを生み出したアーティストたちです。

先人の作品や生き方に着想を得て Sellenatela らしいデザインの靴を作りだす。そのチャレンジを通して、榎本自身も多くを学び、たくさんの恩恵を受けています。そして、自らの制作の過程を公開することで、先人の素晴らしい作品に触れる楽しさを共有できたら、という思いも持っています。

ファッションアイテムの一つとしてだけでなく、Sellenatelaのシューズが人と人を繋ぐコミュニケーションのきっかけとなれたら幸いです。