【#23】20th — Sellenatelaの軌跡 vol.03
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2012年、わたしが主導してSellenatelaはリブランディングを行いました。それまで姉が作り上げてきたブランドを土台にしながら、わたし自身のバックグラウンドであるデザインやアートをブランドに注ぎ込んでいくタイミングでもありました。そして、百貨店の平場での販売を主軸とするビジネスから、セレクトショップへの卸販売へ。
日本でこだわって作っているからこそ、ものづくりの価値をきちんと届けたい。そんな思いを抱いていました。
わたし自身がファッションを、デザインやアート的な視点で見ていたこともあり、マーケット的なトレンドよりも「格好良い表現」を追求していきました。感性の合う友人スタイリストに声をかけ、感度の高いフォトグラファーをチームに引き込み、格好良いヴィジュアルでブランドを表現する。2012年秋冬コレクションから本格的なヴィジュアルづくりを始めます。
気鋭のクリエイターたちとの撮影は毎回刺激に満ち、仕上がった写真を見るたびに「こんなシューズブランド他にない!」と興奮していたのを覚えています。今思えば、美大時代の作品づくりの延長線上にある感覚だったのかもしれません。




当時は「靴ブランドが洋服ブランドのようなアプローチをすること」が珍しく、バイヤーや業界の方々には「シューズブランドは色がない方が売りやすいんだよ」と言われ続けていました。わたしはその言葉に違和感を抱き、自分たちなりの「色」を求めました。
Sellenatelaの手綱をわたしが引くようになって少し経った2014年、違うキャリアをスタートするために、姉がブランドから抜ける決断をします。そして2014年7月、わたしが会社の代表に就任しました。自ら経営を担う立場になって初めてブランドビジネスの本当の大変さを知ります。
クリエーション - 表現をする。
ビジネス - 経営をする。
この2つの軸のバランスをとることの難しさ。社会に出て働いたこともなく、ビジネスのビの字も知らない当時のわたしにとっては、経営という難しいことと向き合うよりも、表現をする勢いだけが前に進む力でした。
モデルを使ったファッションシューティングを数年続けたのち、表現をより「アート」へとシフト。靴をオブジェクトと捉えアーティスティックな物撮り表現を数シーズン行いました。そして2017年春夏には、イギリス人アーティストによるあえて靴を一切登場させないコラージュ作品をビジュアルに採用。当時、関係者がざわつきました(笑)。今でも好きな作品ですが、冷静に考えるとその作品だけではコレクションの良さは伝わりません。短期的なビジネスとしては失敗ですが、あの時は前衛的でいたい表現者としてのわたしがいました。



ファッションは移ろいやすいもの。セレクトショップに卸してもビジネスは一向に安定せず、どう生き抜くか頭を悩ませることも多々ありました。2012年〜2016年まではセレクトショップへの卸販売を軸にしていましたが、時代の流れや世情とも重なり、そのビジネススタイルに限界を感じ、2017年に本格的にオフィシャルオンラインショップをオープンしました。
百貨店で販売をしていた時はお客様と直接触れ合うことがあったのですが、卸販売に軸を傾けるとお客様が見えなくなる。そんなジレンマもあり、ECオープンを機にまたお客様へ直接届けることを考え始めます。そして、当時のオフィスを不定期に「オープンアトリエ」として解放し、お客様にお越しいただける機会をつくり始めました。実際にお客様と繋がることでブランドの輪郭がまたはっきりとしていく感覚がありました。
そして2018年、ブランドの世界観を空間として体現し、お客様に実際に靴を試していただける場をつくりたいという思いから、富ヶ谷にショールーム「HALL by Sellenatela」をオープン。靴の販売だけでなく、アート本やヴィンテージ花器の紹介、アーティストの企画展……。Sellenatelaというブランドが大事にしている「表現」を行う場を持つことで、ブランドとしての幅を広げました。

HALL by Sellenatela 2018 - 2023
クリエーションとビジネスの間で揺れながらも、Sellenatelaはどんどん自分のブランドになっていきました。
この間も何度も経営的に厳しい局面にぶつかることがありましたが、靴作りとブランド作りの面白さに惹かれ、諦めることなく進み続けました。どこかで使命感のような思いを抱えながら。
次回は、もう一度靴と向き合うために選んだこと。20年の軌跡、最終回です。
続く。