【#18】 革ってエコじゃない?
2年前の5月、初めて姫路にあるタンナーさんを訪れました。姫路は日本三大皮革産地のひとつで、国内生産革の7割が姫路産と言われています。
靴に携わって早15年強。ずっと本革を扱っているのに一度も行ったことがなかった姫路。いつかいつかと思っていた時、とあるご縁に恵まれてついに行くことができました。そして、2年後の今日、やっとブログを書いています。(遅い!)
伺ったのはNOAのガラスレザーをつくってくださっているセナレザーさん。
訪れた時はNOAのガラスレザーの生産時期ではなかったので、工場見学をさせていただきました。
今回のSTORIESでは、姫路に行って何を思ったのか、革に対する私の思いを書きとめておこうと思います。
動物の皮から、製品として使えるようにしたものを革と呼びます。クロム鞣しやタンニン鞣しなど、みなさんも聞いたことがあるかもしれません。鞣しとは、皮の腐敗の原因となるタンパク質や脂肪を取り除き、薬品を使って柔らかくする工程のことを言います。
鞣しが終わってやっと製品としての革づくりです。セナレザーさんなど、多くのタンナーさんはクロム鞣しが済んだウェットブルーと呼ばれる原皮を鞣し工場から仕入れて革をつくっています。
まずは下地づくり。太鼓と呼ばれる大きなドラムに、原皮と水、そしてタンニン(渋)や重曹、ギ酸ナトリウム、酢酸ソーダ、オイルなど、作りたい風合いに合わせて材料を掛け合わせていく。ここで皮に油分を足したり、柔らかくしたり、硬くしたり。あるいは防水剤に漬け込んだり(NOAなどの撥水加工レザーはここで防水剤に漬け込むんだそうです!)、染料を入れて下染めしたり。下地づくりだけでも膨大な工程です。
そして想像以上に緻密で化学的。水が酸性かアルカリ性かでも風合いが変わるので、毎日水のPH値を測り、皮の状態、仕上げたい下地の質感を目指して、タンナー独自のレシピに添って調合するそうです。
太鼓から出した下地の革は一度干場で乾燥させます。ここでまた一工程。
乾いた下地が出来上がったらやっと表面加工に移れます。塗料をスプレーやローラーで塗装したり、型押し機を使い模様を付けたり、ガラス加工を施したり。この工程を経てやっと資材となる。
本革という資材をつくるのはとても手のかかること。頭では理解しているつもりでしたが実際に見ると想像以上でした。本当に百聞は一見にしかず、ですね。
皮革は食肉の副産物です。
人間がお肉を食べ続ける限り皮は出て、それを廃棄せずに加工し、資材に変えて新たな価値をうむ。それはとても尊いことだと、タンナーさんを訪れて改めて感じました。
革はエコじゃない、という人もいますが、革製品はメンテナンスをすることで長く愛用することができます。それはSellenatelaを15年以上運営しながら、私自身が感じていることです。
革靴はクリームなどで日頃からメンテナンスが出来たり、オールソール交換などのお修理ができるのが魅力です。
手間暇かけて生み出された資材と、手のこんだものづくりで出来上がったシューズを長く使って欲しいから、Sellenatelaではお修理やメンテナンスなど細やかな対応をしています。
そうすることで、末長く愛してもらえるシューズづくり、ブランドづくりをしていきたい、心からそう思うから。
長く愛することこそが、本当の意味でのサステナブル。
Sellenatelaが持続可能な世界のために出来ることとして、これからもシューズづくりのSTORIESを発信し続けていこうと思います。